「皆さん、こんにちは。
皆さんはあと5年すると定年です。
定年後の生活を考えたことはありますか?」
「大きく分けると定年後には、
再雇用、再就職、今まで貯めたお金で悠々自適」
「さぁ、皆さんはどんな選択をするのでしょう?」
と55歳を迎える社員を集めて
セカンドキャリア研修が始まった。
会場には、約70人の定年同期が集められ、
6人~8人が一つの班になり、
先ずはそれぞれの思いの共有の時間。
「再雇用は負け組の選択だよな~」
「まぁ、自分は頑張ってお金貯めてきたし、
長生きしない家系だから…」等々。
何を根拠に長生きしない?
何を基準に負け組?
働きたいことで働くという選択肢はないのだろうか?
そんなことを思いながら、この研修は始まった。
その時の自分はというと、
二度の転職で退職金は
この人達よりはるかに少ない。
勝ち負けの問題ではなく、
再雇用だと好きな仕事が
必ずしも保証されているわけではなく、
やりたくない仕事をすることになったら、
そんな自分の姿に満足できるだろうか?
それに再雇用であっても65歳になったら
そこからスタートしないといけないわけだ。
65歳から新たな仕事に挑戦できるような
柔軟性、体力、気力があるだろうか?
その後、年金額の計算方法や
必要なお金の数々を知らされ、
経済的なことから同じ班の多くは、
「仕方ない、再雇用でここに残るしかないかな…」と口にし、
半ばあきらめの表情を浮かべていた。
もっと早くこの話を聞きたかったが、
そんなことを今言っても仕方ない…
自分はあと3年で
会社に頼らない生き方ができるように準備しよう。
ここから改めて自分のやりたいこと探しが始まった。
大学を卒業時に選択した会社
会社内での異動
二度の転職
いずれの場合も自分の意志ですべてを決めてきた。
最後の会社には
社内でキャリア相談が定期的に開催されていたが、
自分には縁のないものだと
相談するという選択肢は思ってもいないものだった。
55歳に受けたセカンドキャリア研修から
1年が経過した頃だった。
会社の体制が変わる、
大きく人を減らすことになるらしい、
という嘘か誠か分からないようなことが
頻繁に聞こえてくるようになった。
それが真実だと分かったのは2018年初め、
数千人規模で早期退職者を募集した時。
それなりの積み増し金も出るらしい。
対象年齢は45歳~59歳。
先着順であることがすぐに判明する。
対象年齢層の社員は、
目の前の仕事もなかなか手につかない様子で
あちこちでヒソヒソ話をしている。
それ以上に全員と面談をしなければならない
部門長の憂鬱そうな顔が印象的だった。
一方、ずばり対象年齢の自分はラッキーだ。
積み増し金の金額を聞いた上で
最終決断すればよい。
あと3年で辞めようと思ったのだから、
それが偶然にも早めに辞めれて
準備して良いよと言ってくれたようなものだと
とてもゆったりと構えることができたのも
セカンドキャリア研修のおかげだと
研修のありがたさを知った。
その後、3回ほどの部門長との面談を経て
2018年の6月末に会社を早期退職し、
約1年の失業給付金生活が始まった。
失業給付金を受け取るためには、
最低限2回の求職活動
またはハローワークでの研修に
出席することが必要となるのだが、
ついに、その研修で
キャリアコンサルタントなる職業の人に
会うことになるのだった。